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【ジョジョ】初めてづくしのエトセトラ

帰国後の何の変哲も無い日常の一コマを謳歌する承花。
『初々しい』がテーマ。 高校生らしい感じ。
あまりにもナチュラルに生存院(原作ネタバレ故反転)。














【初めてづくしのエトセトラ】


「承太郎、買い食いをしてみないか?」

そんな奇妙な提案を持ちかけられ、承太郎はチラリと視線を左斜め下へと移した。
そこには発案者である花京院がこちらの様子を伺うようにしながら共に歩く姿がある。
いつもキリッとしている眉が僅かに下がり、一見困っているかの様にも見えた。

「……わざわざ誘うようなモンか、それは」
「そりゃあね、きみと一緒でなければ意味がない……図々しいかもしれないが」

そう言って、苦笑する。
花京院は別段欲しいものがある訳ではないらしい。
ただ単に『承太郎と共に何かをしたい』だけなのだろう。
思えば、エジプトから命からがら帰還して承太郎が留年して一つ下の花京院と同級生になってからのこの数ヶ月、こんな事は多々起きている。
やれ『一緒に登下校がしたい』だの、やれ『一緒に昼食が食べたい』だの、やれ『勉強会がしたい』だの。
そんな些細な要望を花京院は一生のお願いを使うレベルの深刻さで持ちかけてくるのだ。
いや、彼にしてみればそのぐらい重大な事柄なのだろう。
なんせ花京院にとって承太郎は初めての特別な存在なのだから。

「どこに行くんだ」
「えっ?」
「買い食いってくらいだからコンビニか?」
「あ、あぁ、うん、そうだ、そうしよう!」

承太郎の遠回りな承諾に花京院は一瞬面食らったようだったが、すぐに破顔してみせた。
そんなにも嬉しい事なのだろうか。
まあ、承太郎としても誰かと親しげに買い食いするなんて経験はないので嬉しくないはずは無い。
当然登下校や昼食や勉強会に対しても。

「何を買おうか……肉まんは時期的に外れているし、やはりアイス系統が無難か……」
「なにをブツブツ言ってやがる。 てめーの食いたいものを買うだけだろ」
「ところがそうも行かなくてね……承太郎は何か買うのか?」
「あー……そういやモクが切れそうだったな」
「……今更かもしれないけど、制服でタバコ買うのはどうかと思うぞ」

本当に今更だった。
タバコどころか酒類の購入もザラだと言うのに。
それでも花京院が「今日の所は考え直してくれ」とお説教してくるので、後で自販機で購入する方向に考えを改める。
彼が自分の意見を曲げるなど、以前の承太郎を知る者達に伝えても信じて貰えないであろう。
花京院典明だからこそ出来る芸当である。

「買うものが無いなら外で待ってるかい?」
「このクソ暑い中か?」
「ん、ぼくが悪かったよ」

そんな会話を交わしながら歩くこと数分、二人はチェーン展開している大手コンビニの前に辿り着いた。
頭上に気をつけながら自動ドアを潜ると、「いらっしゃいませー」という店員の挨拶と冷房の出迎えを受ける。
それらに対して何か感想を言うでもなく、花京院はカゴも持たずにスタスタと奥へ入っていった。
どうやら先程までの悩みは解消されたらしい。
後を追うべきか、と承太郎が一歩足を踏み出したその時、視界に商品棚が入る。
その店がオススメしたい商品が並んであるその中の一つに承太郎の手は引き寄せられる様に伸びた。
ピンクを基調にしたパッケージは恐ろしく彼の雰囲気に似合っていない。
そんなことは承太郎自身が一番理解している。
それでもこの『チェリー味のキャンディ』に何故か惹かれてしまった。

「お待たせ……?」

商品を手にして戻ってきた花京院が語尾に疑問符を付けた。
そしてファンシーなパッケージと、それを持っている承太郎の顔を交互に見比べる。
どう見てもミスマッチな組み合わせに戸惑いを隠せないようだった。

「……それ、きみが買うのか?」
「……てめーに釘刺されたからな。 モクの代わりだ」

そう説明(という名の弁明)をすると、花京院は納得したのか笑みを浮かべつつ「一緒に会計しよう」と手を差し出した。
一度断ったものの「付き合ってくれた礼だ」と花京院も譲らず、結果的に奪われるような形で会計される事となった。
普段は控えめなくせに変な所で強情なのが花京院である。

「悪ぃな」
「だからこれは礼だって言ってるだろ? まだ付き合ってもらうんだし」
「なに?」
「『買い食い』なんだから、どこかで食べなくては」

言われてみれば当たり前な事である。
という訳で、承太郎と花京院はコンビニからそう遠くない公園に立ち寄った。
太陽熱で生温かくなってしまった木製ベンチに腰を下ろす。
ジリジリと日光が二人を焼くなか、花京院はビニール袋から先程購入した商品を取り出した。

「はい、君の分」
「ああ。 で、そっちがてめーのか」

キャンディを受け取りながら、残った袋の中身を指差して承太郎は問う。

「まぁね、正確には少し違うが」

含みのある表現を口にしつつ、花京院が取り出したのはアイスクリームのパッケージだった。
封を切ると、繋がった二本のチューブが出てくる。

「一度やってみたくてさ」

パキン、と真ん中で二つに割った片方を承太郎へと寄越してみせる。
その行動で、花京院が今回買い食いを提案した理由が承太郎には理解出来た。
ついでに煙草を買うなと言ってきた理由も。

「ありがとよ」
「どういたしまして」

なんてね、と笑う花京院の手からアイスを受け取る。
この暑さの所為で結露したチューブはとても冷たかった。
中身はそれなりに吸いやすく溶けていたので、それは良かったのだが。

「久々に食ったな、こういうのは」
「ぼくもさ。 ましてや友達と食べる日がくるなんて!」

どうやら花京院はかなりテンションが上がっているらしい。
こんな上機嫌な姿はそうそうお目にかかれないだろう。
好物のチェリーをレロレロしている時以上ではなかろうか、と承太郎はアイスを啜りながら思う。
ならば、こうしたら彼はどういう反応を示すのだろう。
承太郎はすっかり空になったチューブを近くのゴミ箱に投げ入れてから、キャンディのパッケージをバリッと開けた。
中からさらに小分けされたパッケージを取り出してまた封を切る。

「やる」
「えっ」
「やるっつってんだよ」

そう言って透明がかった薄桃色のキャンディを差し出す仕草を、花京院は心底意外そうに見ていた。
しばらくの間そのままだったが承太郎の手が差し出されたままなのに気付いて、少々慌てながら礼を述べつつ手を伸ばす。
しかし。

「あっ」

花京院が思わず声を漏らしたその時には、キャンディは承太郎の口内にあった。
本物には遠く及ばないチェリーの風味を舌で転がしながら、

「こういうのも初めての経験だろ」

と承太郎はいけしゃあしゃあと言ってみせる。
なんの事はない。 親しい間柄にはよくあるくだらないジョークだ。
承太郎も幼少期によく母にやられたモノである。
それをふと思い出し、現在にて実行に移してみた訳だ。

「……確かに初めてだ。 実際やられてみると、なんというか、案外腹立つものなんだな」

花京院はそう感想を述べたが、承太郎の目から見て怒っているようには見えない。
むしろショックを受けているように見える。
落ち込んでいる、と表現するべきか。
予想外の反応に承太郎はポーカーフェイスの裏側で若干動揺していた。
罪悪感という概念がゆっくりと体の内側を侵食していく。

「花京院……」

どうにかしなければならない、と思いながらとりあえず名前を呼んだ。
「なんだい」と残り僅かだったアイスを食べ終えた花京院がこちらを振り向く。

「やる」
「えっ」
「やっぱり、やるよ」

そう囁きながら花京院の頬を両手で挟み込み、そっと唇を寄せる。
ポカンと開かれていた口内に舌を侵入させるのは容易い事だった。
ようやく自分の身に起きている事を理解した花京院が抵抗しようと体を動かすも、承太郎はあっさり自分の腕の中に収めて拘束してしまう。

「ん、む、っふ」

腕の中で花京院が微かに震えるたびに承太郎の耳元を前髪が掠めた。
彼が間近に居るという事がよりリアルに感じられる。
しばらくして承太郎が花京院を解放すると、二人の間を透明な糸が繋いで、すぐに切れた。

「……こういうのも初めてだろ?」

太陽の所為か、はたまた別の要因か、顔をほんのり赤く染めた花京院に問いかける。
花京院はチェリー味のキャンディを落とさぬように口元を手で押さえながら、

「当たり前じゃあないか」

と小声で呟いた。
蚊の鳴くような細い、しかしはっきりとした声を聞いた承太郎は帽子の鍔を下げて目元を隠す。
そして自分もいつもよりかは小さい、しかし確実に花京院に届くような声でこう言った。

「奇遇だな。 おれもだ」





*****

前作があまりにも承花詐欺だったので、全力で承花に舵とってみた作品。
もうね、高校生二人が高校生活を満喫してるだけで幸せですよ私は。
そして当然のように原作の設定を捩じ曲げてますが、ゲッターですら號〜アークの辺りをネタに出来るようになるまで1年掛かってるので勘弁して下さい。
アイアムハッピーエンド愛好家。

承太郎達と出会うまで親しい友人を作らなかった花京院からしたら、なにもかもが新鮮で楽しくて仕方無いんだろうと思います。
承太郎の方も(花京院ほどじゃないにしろ)こういう経験は少なそうなので、やっぱり楽しいんだと思う。
そんな二人を考えてるだけで幸せです。
で、高校生なのでちょっと失敗もするし、暴走もする。 そんな承花。
個人的に花京院の口調は男らしい方が好みなのですが、書いてるとうっかり語尾を「〜ね」とか「〜よ」にし過ぎてしまうので難しいです。
でも、そのうち「〜たまえ」とか言い出しそうなのが一番怖いです。(笑)


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