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【テニプリ】太陽を見るか、それとも月か

新テニスの王子様から月光さん×寿三郎。 あと種ヶ島さんと大曲さんとあくと兄さん。
前半は寿三郎視点で、後半は月光さん視点。
自分でもどうしてこうなったとしか思えないが、ハマってしまった物は仕方が無い。(開き直り)












【太陽を見るか、それとも月か】

海外遠征を近日に控えたとある夜。
ガコン、と自動販売機から缶ジュースが落ちる音が寮の玄関口に響いた。
カバーを開け、アルミ缶に触れる。

「ちべたっ」

などと独り言を呟きつつ、毛利寿三郎はその缶を持って帰路へとついた。
夜ももう遅い、と言うにはまだ早いような時間ではあるが心持ち早歩きで廊下を進んで行く。
その途中——休憩ルームの方から談笑の声が聞こえ、彼はふらりと足の向きを変えてみた。

「皆さん、何してはるんです?」

ひょい、と大きな体で覗き込む。
そこにはNo.2である種ヶ島修二、No.6である大曲竜次、そしてNo.17である三津谷あくとの3人が思い思いに腰掛けていた。
なかなか珍しい光景だと内心思う。

「おー、寿三郎やん。 自分もここ座りや」

種ヶ島はいの一番にそう声をかけ、隣のシートを手の平で叩いた。
特に断る理由もないので「お言葉に甘えましてー」と笑いながらどかりと腰を下ろす。

「お前どんだけ土産欲しいんだよ、勘弁しろし」
「土産? 何の話です?」
「今度の遠征に種ヶ島さんだけ行かないだろ? だからお土産を買ってきて欲しいとの事だ」

大曲に代わり、三津谷が簡潔に説明する。

「あー、そないな事ゆーてましたね」
「飛行機嫌いで遠征パスとか、お前も偉くなったな」
「やって俺偉いもん」
「黙れし」
「……まぁこんな感じで、全く進展はないがな」

半ば呆れを含みつつ苦笑する三津谷につられて、毛利も「あはは」と軽く笑った。
どちらかと言えばサボりがちな毛利に種ヶ島を咎めるつもりは毛頭ない。
むしろ明確な理由(どこまで本当かは知らない)がある分、自分よりも良いのではないかとすら思う。

「別に高級なモン頼んでる訳や無いで。 地方のベタベタな名産みたいな感じでええんやから」
「例えば?」
「うーん……明太子とか、手羽先とか、ずんだ餅とか!」
「食べ物ですね、分かりました」

三津谷が納得したように頷く。
確かに非常に分かりやすいラインナップだ。
だが毛利は未だ未開封の缶を握ったまま首を傾げる。

「ずんだ餅って、どないな餅ですか?」
「えーお前知らんの? めっちゃ美味いで」
「あれだろ、枝豆を粉状にして餅にかけたとかそんな感じの」
「はい。 名称については、『豆を打つ』事から『豆打(ずだ)』と言われて、それが転じて『ずんだ』になったとか、かの伊達政宗が『陣太刀』で枝豆を砕いて食した事が由来だとか、他にも諸説言われていますね」

流れるような雑学に、毛利は口をぽかんと開けて声も出せなかった。
大曲も、後輩の博学っぷりに「へぇ」と素直に関心している。
種ヶ島は顎に手を当てた上に目を閉じ、何かを考えているような素振りをしていた。

「おい、何やってんだお前」
「いやぁ『伊達政宗』で思ったんやけど、この合宿にもおるよな『伊達』」

そう言われて毛利の、そして多分大曲と三津谷の脳裏にもある人物が過った。
No.12である伊達男児である。
もっとも彼は眼帯などしてはいないが。

「あと『徳川』もおるし、『松平』もおるし、人物やないけど『平等院』もおる……なんかオモロいな」
「字はちげーけど『種子島』も鉄砲伝来の島だっけな」
「そーいや立海には『真田』と『幸村』がおって、2人合わせて『真田幸村』なんて言われよってました」
「そういうお前も『毛利』だろ、忘れてんなし」
「あっ」

大曲の言葉が出るまで自分の事をすっかり忘れていた。
『毛利』。 有名所でいえば『元就』の名が続くだろうか。
正直そこまで歴史に詳しくない毛利でもその人物の名前は知っている。

「名前は知っとるんですけどね……名前は」
「まーそんなモンちゃうか。 俺も種子島がどんな島か知らんし」
「ならコレは知ってるか? 毛利元就は幼名を『松寿丸』と言うんだ」

『寿』の字が同じだな、と三津谷は続けた。

「へぇーそうなんですかぁ。 それは知りませんでしたわぁ」
「あとは……そうだな」

段々興が乗ってきたらしい三津谷は楽しそうに口元を緩ませた。
「なぁなぁ幼名って何なん?」「俺が知るか」という会話をしている先輩らを置き去りに、さらに雑学を重ねて行く。
『謀神』とあだ名された事、『三本の矢』の話は後世の創作である事などなど、次から次へと逸話が飛び出し、正直毛利の脳はパンクしそうであった。
缶ジュースがすっかり汗をかいてぬるくなっても話は止まらない。

「毛利元就は朝日を拝みながら念仏を10回唱える程の熱心な仏教徒で、息子にも『毎朝の念仏を欠かすな』というお達しを出しているんだ」
「そりゃ面白いな」
「そらオモロいな」
「へぇー……って、えっ、あ、あれ? 先輩ら聞いてはったんですか」

てっきりドロップアウトしていたもんだと思っていた毛利は、突如割って入って来た言葉に驚いて缶を落としてしまった。

「お前、馬鹿にすんなし。 こういう話も割と面白いもんだろ」
「それに『太陽』を信仰しとった『毛利』の名前を持つお前が、この合宿で『月光』と組んどるなんて皮肉すぎて笑ってまうわなー」

ケラケラと種ヶ島が笑う。
『月光』——それは現在も毛利のダブルスパートナーである2つ年上の『越知月光』の名である。
背が高くもの静かで、ともすれば威圧感すら与えかねない男ではあるが、毛利は彼の事をかなり慕っている。
彼と共にダブルスで戦う為に夜な夜なトレーニングをしてしまうぐらいには慕っている。
そう、慕っているのである。

「……うん? 寿三郎、どした?」

わなわなち震える毛利に気付いた種ヶ島が声をかけた次の瞬間、

「月光(つき)さあぁぁぁん!!!」

明らかに苦情が来そうな音量で叫び、彼は駆け出していった。

***


一方その頃、件の越知月光は自室でラケットの手入れをしていた。
ガットの張りやグリップの感覚はもちろんだが、フレームも汚れ1つ無いよう丁寧に磨いて行く。
その様を同室兼ダブルスパートナーである毛利は「まるで武士みたいやね」と評したのは記憶に新しい。
武士。 部活の部長でもU-17代表でも、己の力を発揮するだけだというスタンスの自分には強ち間違いではない表現だと思う部分もある。
流石に「7度主君を代えねば武士に非ず」などとは思わないが——。

「月光(つき)さあぁぁぁぁぁぁん!!」

背後のドアが開く音を掻き消し、もはや悲鳴に近い叫びが越知の耳を劈いた。
そして息吐く暇もなく背中に襲いくる衝撃。
いくら自分より小さいとはいえ毛利の身長は191cmであり、その巨体でタックルされたとなれば相当な物である。
取り落としたラケットが虚しくカラカラ音をたてる。

「も、毛利、」
「月光(つき)さん! 俺は太陽よりも月の方が好きやからね! だから安心して下さい!!」
「……何の話だ?」
「いや確かに太陽も大事やと思いますけど! でも夜を照らす月もほんま素晴らしいと思います!」

さっぱり話が読めない。 本当に何の話なのか。
とりあえず落ち着かせようと、背中にのしかかる毛利の名前を出来るだけ優しく呼んでみる。
何故か肩を掴む手に力を入れられた。 痛い。

「あぁ……やっぱり」

遂に毛利が「月光(つき)さん月光(つき)さん」しか言わなくなった時、開けっ放しだったドアから三津谷が顔を覗かせた。
それに続いて種ヶ島と大曲もやってくる。

「丁度良い。 どういう事か知っているなら説明してくれ」
「全部こいつの所為だ」
「えっ、何でそーなるん!?」
「……とりあえず俺が説明します」

三津谷の説明曰く、ひょんな事から毛利元就に関する雑学披露が始まってしまい、その中で朝日に向かって念仏を唱えている話題が出て来た。
それを受けて、種ヶ島が越知の名前と絡めて毛利をからかった結果が現在という事らしい。

「なるほど、確かにお前の所為だな」
「はーい、竜次くんも「面白い」ってゆーてましたーぁ」
「俺はお前みたいな意味とは違ぇし」
「酷い裏切りや」

半ば漫才じみた会話を繰り広げる2人は一先ず置いておき、相変わらず同じ言葉しか繰り返さないパートナーに視線を向ける。
流石に泣いてはいないようだが、自分にしがみついて離れようとしない。
かといって無理矢理引き剥がすのもどうだろうか、と思考を巡らせていると、三津谷が

「毛利元就は仏教徒として太陽に念仏を唱えていただけで、別段太陽を信仰していた訳じゃないぞ」

と毛利に語りかけた。
途端、毛利はガバッと顔を上げて目を輝かせた。
ようやく肩の痛みや背中の重圧から解放される。

「ほ、ほんまですか!?」
「あぁ。 なんたって『念仏を唱えるのは月でも構わない』と言っているぐらいだからな」
「良かったぁ、種ヶ島さんがえらい脅しよるからビビリましたわぁ」
「みんなして俺の所為にしよってからに……」
「だからお前の所為だって言ってんだろ。 越知、悪かった」
「いや、大した問題ではない」

流石にあのタックルは堪えたが今ここで言っても仕方の無い事である。

「ほな、俺らは帰るで。 おやすみ〜」
「じゃーな」
「それでは……あぁ、これを忘れてたな」

去り際に三津谷が何かを下手投げで放る。
それは山なりのカーブを描いて綺麗に毛利の方へ飛び、そして毛利もしっかりそれをキャッチした。

「忘れ物だ」

ちらりと毛利の手の中を盗み見ると缶ジュースが握られていた。
それを握りしめたまま三津谷にお礼を言う後輩からちょっとだけ目を逸らし、放置されていたラケットを拾う。
杞憂だとは思うが一応傷の有無を確認していると、申し訳なさそうな表情を浮かべた毛利が回り込んで来た。

「あの、えーと、すいませんでした月光(つき)さん……」
「大丈夫だ。 さしたる影響もなさそうだからな」
「肩も大丈夫ですか? 俺思いっきり掴んでしもて」
「あぁ。 柔ではないつもりだ」

実際痛みももう感じない。
ラケットの方も予想通り無事なようだ。
そう伝えると毛利はハの字になっていた眉を普段の位置に戻し、気が抜けた様に溜息を吐いた。
そのまま越知の隣に腰を下ろして缶ジュースのプルタブを開ける。

「途中、俺の名前しか呼ばなくなった時は困ったがな」
「えっ、あぁ……なんかよぉーわからんけど、そんな気分でして……あはは」
「そんなに『太陽』が嫌か?」
「ちゃいます、俺は月光(つき)さんが好きなんです!」

真っ直ぐな視線と共に放たれた発言には一部の迷いも無い。
少しだけ面食らう。

「……俺は『月』でもないがな」
「でも俺にとっての月は月光(つき)さんやから……。 俺は「月でも」なんて言わないですよ、自分から月を選びますから」
「そうか。 なら俺は「太陽」を選ぶとしよう」

「えっ?」と首を傾げる毛利の頭をくしゃくしゃと撫でた。
くるくるとした毛先が動きに合わせて揺れる。

「もー、何ですの月光(つき)さん。 どないな意味?」
「さてな」

はぐらかして撫で続けると、毛利はくすぐったそうに、しかし嬉しそうに笑った。


なお次の日の朝、この様子をこっそり見ていた種ヶ島に2人はからかわれたのであった。




*****

とても☆いきなり☆高校生。
自分でもどうして(ry。
大体OVAの所為だとは思いますが、まぁ元々好きではありましたし……。
高3と高1の元々他校同士のダブルスが、どうしてこんなに仲が良いのか。
なんで月光さんの影響で寿三郎のサボり癖が改善されるようになるのか。
なんで自分の部屋で出来る様なラケットの手入れを、寿三郎がランニングマシン走ってる横でやるのか。
月寿の可能性は尊い。(真顔)
願わくばまたこの2人のダブルスが見られたら嬉しいなー。
もしくは寿三郎に活躍を……関節脱臼する以外の活躍を……。

作中でも言ってますが、「毛利」の名を持つ男が「月光」とダブルス組んでるのはなかなかに面白いなー、から派生した話。
どこまで狙って作ってるのか分かりませんが……;;
あと途中の「7度主君を代えねば武士に非ず」は史実高虎の発言(?)です。
私のにわか戦国知識を色々ぶっ込んだ。(笑)

月寿メイン作品ですが、書いていて一番楽しかった&書きやすかったのは種ヶ島さんでしたとさ。(笑)
大曲との掛け合いとか楽しさしかない。
妹には「お前あくと兄さん書くの上手いな」と言われました。
あれ? 前にもこんな事があった……ような……。


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