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【ワートリ】明日を視るというコト

ワートリより迅×太刀川。 もしくは太刀川×迅。
私にしてはかなり珍しくどっちの解釈でも良いCPです。
第2次大規模侵攻から数日後の2人の通話記録。












【明日を視るというコト】

第2次大規模侵攻から3日。
激戦の跡を色濃く残す警戒区域を、迅は玉狛支部の屋上から遠巻きに眺めていた。
その『瞳』に特に異常は映らない。
平常となんら変わりない本部が『視える』のみである。

「……未来は安泰、で良さそうか」

そんな言葉と共に安堵の溜息を一つ吐く。
もちろん、真に平和が訪れた訳ではないという事は、彼自身もよくよく分かっているつもりだ。
それでも一時の安らぎくらいは素直に受け止めたかった。
例えば、後輩が目覚めるまでの時間くらいは。

「メガネくんが目覚めるまではあと3日か4日って所だったっけかな」

見舞いに行く度に『視た』未来の事を思い出しながら背伸びをする。
正直昏睡状態の後輩を見るのは迅としても辛い。
けれど訪れるはずであった最悪の未来の事を考えれば、まだマシな方だ。
顔見知りの戦闘員全員が無事に五体満足でいられる事はとても喜ばしい。

(だけど……)

一切死人が出なかった訳では無い。
一切行方不明者が出なかった訳では無い。
迅はそれも知っていた。
自分が三雲修という人間を助ける手段を選べば、別方面に被害が出るという事は知っていたのだ。

(おれは……)

その時、迅の服の中でスマートフォンが振動し始めた。
緊急連絡か何かかと手にとって発信者を確認する。
【太刀川さん】
液晶画面に表示されていた発信者名に僅かに戸惑った。
太刀川と連絡を取る事自体そうそう多い訳ではない。
あったとしてもほぼランク戦か模擬戦のお誘いである。
本部も後処理で慌ただしい状況で連絡が入るとは思ってもみなかった。
いや、だからこそ、むしろ彼らしいと言うべきなのか。
迅は液晶の『通話』をタップし、そして軽妙に声を上げてみせる。

「はいはい、こちら実力派エリート」
『そうか、こっちはナンバーワンアタッカーだ』

同じ様なノリで返ってきた声は存外真面目で、また少しだけ驚く。
雰囲気から察するにいつもの用件ではなさそうだ。
探りを入れるように、迅はいつものペースで話を続ける。
少しばかり嘘を混ぜ込んで。

「どうしたの太刀川さん。 今日はおれ忙しいから戦ってる暇ないよ」
『嘘吐け、今日非番だろ。 あと、今日はそういうつもりじゃないんだ』
「へぇ、珍しいね。 あっ、そういえば特級戦功おめでとー」
『ん? あぁ、そういやそうだったか』

いや、そうだったか、って。
特級戦功をそんな言葉で片付ける人間はそうは居ないだろう。
やはりそれも彼らしいというかなんというか。
羨ましい程に。

『ていうか、おまえも貰ってるだろ』
「いやぁ、おれのは特級じゃないしね。 流石に新型を11体も倒せないよ」
『イヤミか。 イヤミだな。 そうなんだな』

拗ねたように語気を強める太刀川に、思わず迅は吹き出してしまった。
すると『おい笑ってんなよ!』と非難された。
人型ネイバー及び黒トリガーとの戦闘を希望していた太刀川としては、新型を11体切り倒そうとも満足出来るラインではないのだろう。
対して迅はしっかり人型と戦闘し、尚かつそいつを捕虜にしているのだから、太刀川が当たって来るのも無理はない。

「あれ? もしかしてそれが言いたかったりするわけ?」
『いやそれは今思い出したっつーか、おまえから振ってきた話題だろ』
「じゃあ何? さっきも言ったけどおれ忙しいんだよね」
『ふぅん……ならさっさと終わらせるか』

そう言ってから、太刀川はゴホンと咳払いをしてみせた。
通話口越しに聞こえてきたわざとらしさに、迅は再び小さく笑い声を洩らす。
また非難が飛んでくるかと軽い気持ちで構えていたら、

『お疲れ様、迅』

なんて労いの言葉が飛んできたもんだから、迅は口を半開きにしたまましばらく動けなくなってしまった。
突風でも吹いたらうっかり支部から落ちてしまいそうだ。
機械を通して自分を呼ぶ声に気が付き、迅はハッと気を取り直す。

『おい、迅、どうした。 無視か』
「……違うよ、まさかそんな事言われるなんて思ってもみなかったから、驚いただけだって」
『そうか、おまえを驚かす事が出来たか』

そうかそうか、と太刀川は声だけでも分かるぐらい上機嫌に納得していた。
もしかして自分を驚かす為だけに電話をしてきたのだろうか。
だとしたら恐ろしく暇人だ。 単位は大丈夫なのだろうか。

「……本当、今日どうしちゃった訳、太刀川さん?」
『なんだよ。 年上の労いくらい素直に受け止めろ』
「だってさ、太刀川さんに『労う』なんて精神があると思ってなかったし」
『……悪かったな、隊長らしくなくてよ』
「そこまで言ってないでしょー。 うん、ありがと。 嬉しいよ」
『最初からそう言っとけよなぁ、どうせ今回も裏で色々動いてたんだろうから』

正直迅から見て太刀川という男は、こそこそとした事を嫌う人種だと勝手に思っていた時期もある。
それが大間違いである事に気が付いたのはやはり3年と少し前だっただろうか。
さっきはあんな捻くれた言葉を吐いてしまったが、彼が意外と広い視野と絶妙なフォロー力を持っている事だって随分昔に知っていた。
強いだけでは、隊長は務まらない。

「まっ、それはおれの趣味だからね」
『なら俺が戦うのも趣味だ』
「それ言っちゃう?」

それを言ってのける声も迅が羨むべき対象だ。
多少の誤魔化し込みの迅とは違い、太刀川は本気で言っている。
損得勘定抜きの100%趣味で、この街を救っているんだから、心底感心出来る。
心底切望出来る。

「…………おれの趣味はさ、限界があるよね。 なんか、改めてそう思う」

ポロリとそんな言葉が零れ落ちる。
あの日、死人が出る事も、行方不明者が出る事も、迅は知っていた。
そして、彼らを救うという未来だって視えていた。
しかしその選択肢を迅は選び取らなかった。
三雲修を救う事――それが今後にとって最善であると判断したからだ。
仮に時間を巻き戻す事が出来ても迅はそれ以外の未来を選択しない。

――迅悠一は、人の命に順位をつけたのだ。

神でもない。 悪魔にもならない。
ちょっと変わった能力を宿しただけのただの人間。
ただの人間がそれを下す事がどれほどおこがましい行為だろうか。

「おれは正義の味方みたいな誇れる奴じゃないよ」

『なら俺だって好き勝手してるだけでそんな大したもんじゃねぇよ』
きっとそんな言葉が返ってくる。
そうじゃないよ、太刀川さんは立派な正義の味方だよ。
少なくともおれなんかよりはずっと、ずっと。

『でもおまえのおかげで助かった奴だって大勢居るだろ。 そいつらからしたらおまえは正義の味方だったんじゃねぇの?』
「え?」
『そういうやつらまで無かった事にしてやるなよ。 それに、』
「……それに?」
『別に正義の味方じゃなくたってこの街は守れるしな』

だろ? と微笑むような息遣いが聞こえて、迅は思わずその場にしゃがみ込んでしまった。
その分だけ地面が近くなる。
膝の間に頭を挟むように蹲りながらもどうにか会話を続ける。

「太刀川さんってさ……そういうの言ってて恥ずかしくならないの?」
『……実はちょっとカッコつけすぎたと思ってる』
「はははっ、やっぱり」
『笑うな! あぁくっそ、恥ずかしくなってきた!』

あのもさもさした髪を片手でガシガシ掻いている図がなんとなく見えた。
未来なんて予知出来なくても容易く見える様子だ。

「照れてる太刀川さんが見られないのは残念だなー」
『……俺としちゃ不本意だが、もうじき見られると思うぞ』
「え? なんで?」
『下』

めちゃめちゃ簡潔な言葉を最後に太刀川が喋らなくなってしまい、迅は慌てて辺りを見回す。
とは言っても玉狛支部は川の中腹に建てられているので見渡せる場所は少ない。
支部に繋がる橋の上、そこに人影が見える。
隊服とは異なるロングコートに身を包んだ短い蓬髪の男が一人。

「……なんでいるの!?」
『……なんでだろうな?』
「いやいや、訊いてるのおれだから」
『話してたら『会いてーなー』って気分になって、ふらっと』

本部の人間がふらっと支部に、城戸派の人間がふらっと玉狛に、来たらダメだろ。
そんな言葉すら発せなくなるくらいに迅は驚いていた。
第2次大規模侵攻後に太刀川を見かけた際、こんな未来は視えなかったはずなのに。

(ホント読めないわ……)

呆然と眼下を見下ろしていると人影がこちらを向いた。
表情までは読めないが、明らかにこちらを見ている。

『つーか、おまえなんでそんな所に居るんだ?』
「……なんでだろうね?」
『何だそれ。 まぁいいや、今からそっち行くから入れてくれよ』
「宇佐美がいるから通してくれるんじゃない?」
『…………逃げるなよ?』
「逃げないよ、太刀川さんの照れ顔なんて滅多に見れないし」

それに迅には視えている。
太刀川が自分の隣に居る光景が。

『じゃあすぐ行くわ。 ダッシュで行く』
「建物内は走るの禁止ですけどー」

その言葉が届いたかどうかも分からないくらいで通話が切れた。
同時に、橋の上を全力疾走する太刀川も見える。
その姿はあっという間に迅の死角に入ってしまったので、そう遅くない内にここまで上がってくる事だろう。

「あんたには敵わないなぁ、太刀川さん」

そう呟いて、迅は滲む未来を拭った。





*****

迅太刀迅は、下手に愛だの恋だの言うより、唯一無二の好敵手の方がそれっぽく見えて美味しい。

それはさておき、いくつかの未来を視てからどれかを選び取るって心理的負担が尋常じゃなさそうです。
迅さんまだ19だからね。 そりゃ悩みもするだろう、と。
それを全く意図しない内に救ってくれてるのが太刀川さんだったらとても嬉しい。
そんな気持ちで書きました。
あと随所にラインバレルをリスペクトしつつオマージュしてる部分があります。
分かりやすいのは「そういうやつらまで無かった事にしてやるなよ」の部分でしょうか。
個人的にワールドトリガーとラインバレルは似通った所が多くあると思ってるので、今後もリスペクトしていきたい所存です。
そしてワートリ読者がラインバレルを読む所まで持っていきたい。(笑)

タイトルは結構まんまですが、ラインバレルリスペクトなので「事」をカタカナ表記にしてあります。
多分誰も気付かないでしょう。(笑)

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